
十三代目市川團十郎白猿を襲名させていただくにあたり、「伝統の継承、未来へ」というものが一つのテーマとして私の使命だと考えております。
私一人が頑張っても芸能は繋がっていかず、やはり子どもたちや若い世代に活躍してもらわなければ、伝統芸能の未来が見えなくなってしまいます。
ぼたんと新之助が名前を受け継ぎましたので、いよいよ本格的に「伝承への道」を切り拓いていきたいと、今回この公演を開催させていただくことになりました。
お客様と一緒にこの道を歩んでいけたら嬉しいです。
十三代目市川團十郎白猿
座談会
市川團十郎
市川ぼたん
市川新之助
他
『子守』清元連中
かつては、地方の貧しい家の少女が子守として年季奉公に出されることがあり、江戸の町には子守の姿がよく見られました。この作品は、そんな江戸末期の町の様子を舞踊化した「風俗舞踊」の一つ。越後から上京した子守が、赤ん坊を背負って豆腐屋へ使いに行った帰り道、鳶に油揚げをさらわれ、それを追って飛び出してくるところから始まります。赤ん坊が眠った後には、一人で人形遊びするなどあどけなさを見せる一方で、恋に憧れる大人びた顔も覗かせますが、全体を通してまだ都会になじまない田舎娘の無邪気さが感じられます。後半では、紅白柄の棒で、両端に房のついた「綾竹」という小道具を用いて、清元の演奏と息を合わせた軽快な踊りを見せます。五節句(※)の変化舞踊から独立して踊られるようになった作品です。(初演:1823年)
※1月7日(人日)、3月3日(上巳)、5月5日(端午)、7月7日(七夕)、9月9日(重陽)
市川ぼたん
『鳶奴』長唄囃子連中
七世市川團十郎が一月から十二月の情景を十二変化で踊った「倣三升四季俳優(まねてみますしきのわざおぎ)」のうち四月に当たるのが本作で、当時は「初鰹の戯奴僕(はつがつおのさらわれやっこ)」と呼ばれました。その後、八世市川團十郎が七歳の時にこの部分だけを踊って評判を取ると、子どもの舞踊の手ほどきの曲としても人気を得たと伝わります。奴とは武家に仕える中間(ちゅうげん)。新緑の季節、主人の命で使いに出た帰りでしょうか、鳶に初鰹をさらわれた奴が駆けて来て、賑やかな演奏とともに戰物語風の振りを見せるほか、井戸の鶴瓶棹を手に鳥を捕る振りなどがユーモラスに描かれます。『子守』と併せて、鳶に物をさらわれることがよくあった江戸の日常を描いた作品です。(初演:1814年)
市川新之助
『男伊達花廓(おとこだてはなのよしわら)』
長唄囃子連中
江戸の庶民の憧憬の的であった男伊達。その代表格である御所五郎蔵を主人公にして、侠客としての粋な風情と心意気、恋人の許へ通う男の艶やかな色気を身上とし、若い者を相手にみせる颯爽とした所作ダテが大きな見どころとなる歌舞伎舞踊。歌舞伎の様式美、舞踊の華やかさを一時に堪能できる演目です。
この演目の元となったのは1864年(文久四年)2月、江戸市村座で初演された『曾我綉侠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ)』です。作者は江戸時代を代表する劇作家の河竹黙阿弥。彼は約50年間に時代物90作品、世話物130作品、そして、140曲もの舞踊を生み出しました。
物語は、身分違いの叶わぬ恋に落ちた男女が江戸に追放され、男は五郎蔵として、女は傾城・皐月として廓に身を置き日々を過ごしていました。そんなある日、過去の遺恨から2人は運命の悪戯に翻弄されていくという悲劇のストーリー。
この物語のスピンオフ作品として生み出された『男伊達花廓』。御所五郎蔵の皐月への気持ちに想いを馳せながらお楽しみください。
市川團十郎
市川ぼたん
市川海老蔵改め十三代目 市川團十郎白猿
本名 堀越寶世(たかとし)。1977年12月6日、十二代目市川團十郎(当時十代目市川海老蔵)の長男として東京に生まれる。1983年5月歌舞伎座『源氏物語』の春宮で初御目見得。1985年5月歌舞伎座『外郎売』の貴甘坊で七代目市川新之助を名乗り初舞台。1999年1月浅草公会堂『勧進帳』では弁慶を初役で勤め、大きな話題となる。2000年5月歌舞伎座『源氏物語』ではこれまで祖父、父が演じてきた光源氏を継承し、光源氏を演じられる俳優として高い評価を得る。2004年5月、六月歌舞伎座『暫』の鎌倉権五郎、『勧進帳』の富樫左衛門、『春興鏡獅子』の小姓弥生後に獅子の精、『助六由縁江戸桜』の花川戸助六で十一代目海老蔵を襲名。
祖父十一代目團十郎を彷彿させる美貌と風姿を持ち、家の芸である荒事はもとより、『熊谷陣屋』の熊谷直実、『寺子屋』の松王丸、『伽羅先代萩』の仁木弾正、『義賢最期』の木曽義賢など義太夫狂言の時代物、『極付幡随長兵衛』の幡随院長兵衛、『与話情浮名横櫛』の切られ与三郎、『夏祭浪花鑑』の団七九郎兵衛などの世話物も積極的に手がけ、成果を上げている。歌舞伎十八番の『毛抜』『鳴神』『不動』が織り込まれている通し狂言『雷神不動北山櫻』を新しい演出・趣向で練りあげたのを手始めに、上演が途絶えていた歌舞伎十八番の復活に意欲的に取り組み、新歌舞伎十八番の復活にも挑んだ。また、2013年には、自主公演ABKAIを立ち上げ、次々と新作を生み出す。2015年から始まった六本木歌舞伎では、演劇や映像などの演出家、脚本家、クリエーター、アーティストと共に新作を創り上げる。海外公演は、2004年10月に十一代目海老蔵襲名披露をパリ・国立シャイヨー宮劇場で行い、その後も2006年5月、6月ロンドン・アムステルダム公演、2007年3月パリ・オペラ座ガルニエ宮公演、2009年9月モナコ・オペラ座公演、2010年6月ロンドン・ローマ公演、2014年11月、2015年10月シンガポール公演、2016年2月UAEフジャイラ公演、3月にはニューヨーク・カーネギーホール公演を行うなど、いずれの舞台も大きな話題となっている。
舞台以外では、テレビは2003年NHK大河ドラマ「武蔵 MUSASHI」で主演の宮本武蔵を演じ、映画は2006年「出口のない海」、2011年「一命」、2013年「利休にたずねよ」、2014年「喰女−クイメ−」でいずれも主演を勤めている。2015年より東京2020組織委員会文化・教育委員会委員を務め、2021年東京2020オリンピック競技大会開会式へ出演。2022年11月歌舞伎座『勧進帳』の武蔵坊弁慶、『助六由縁江戸桜』の花川戸助六で十三代目市川團十郎白猿を襲名。
2001年芸術選奨文部科学大臣新人賞、2007年3月フランス芸術文化勲章シュヴァリエ。
2011年7月25日生まれ。十三代目市川團十郎の長女。2014年「古典への誘い」八千代座公演の『芝居前三升麗賑』で初御目見得。2018年1月新橋演舞場「初春歌舞伎公演」の『日本むかし話』に出演。「桃太郎」や「かぐや姫」などを題材にした通し狂言で、かぐや姫の少女時代を演じ、愛らしい姿で客席を魅了した。2019年1月新橋演舞場「初春歌舞伎公演」の『牡丹花十一代』にて手古舞をしっかりと踊り、成長を印象付けた。同8月シアターコクーン「市川會」にて『羽根の禿』の禿で四代目市川ぼたんを襲名。
2021年1月新橋演舞場「初春海老蔵歌舞伎」にて9歳で『藤娘』を踊り、観客を魅了した。2022年4月八千代座「市川海老蔵八千代座特別公演」にて『手習子』の町娘を勤めた。舞台以外でも、テレビドラマ「二月の勝者-絶対合格の教室-」に出演。また、映画「DC がんばれ!スーパーペット」で声優にも挑戦しマルチに活躍している。
本名 堀越勸玄(かんげん)。2013年3月22日、十一代目市川海老蔵の長男として東京に生まれる。2015年11月歌舞伎座『江戸花成田面影』で初御目見得。2017年7月歌舞伎座『駄右衛門花御所異聞』の白狐、2018年7月歌舞伎座『三國無雙瓢箪久』の三法師、『源氏物語』の光の君、春宮、2019年1月新橋演舞場『極付幡随長兵衛』の長松、『牡丹花十一代』の鳶頭を、同年7月歌舞伎座『外郎売』の貴甘坊、2021年1月新橋演舞場「初春海老蔵歌舞伎」では『橋弁慶』の牛若丸、同年5月明治座6月南座『実盛物語』の太郎吉、2022年7月歌舞伎座『夏祭浪花鑑』の市松、『雪月花三景』の男蝶の精を勤め、大役に次々と挑戦している。
主催:読売新聞社/ニッポン放送/tvk(神奈川)
制作:株式会社3Top 制作協力:全栄企画株式会社/株式会社ちあふる
協力:松竹株式会社
お問い合わせ:Zen-A(ゼンエイ)
TEL 03-3538-2300 (平日11:00〜19:00)
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